この世の中には高く売れるものと、安くしないとうれないものがあります。
もしあなたが明日から好きなものを自由に売って生きていくとしたら、いったいどのような戦略でビジネスを展開するでしょうか
①良い商品を安く売る、②良い商品を高く売る、③粗悪な商品を安く売る、④粗悪な商品だが高く売りつける
ざっと考えただけでも4つ浮かんできました。一体どれが正解なのでしょうか?
高い値段なのに売れてしまう不思議な商品
世の中には高い値段なのに売れてる”不思議な商品”が数多くあります。
その代表例の1つがキャビアだと思います。
キャビアを初めて食べた人は「この味でこんな値段なの?」とギャップに驚くそうです。
プチプチしてて、ネットリしてて、なんかしょっぱい・・・。とてもじゃないが美味しいとは言えない・・・。
そう、キャビアは世界最大珍味の1つで、食材なのに美味しさが売りではないのです。極端な言い方をすると、キャビアは食べ物としての美味しさ(価値)は赤点だが、どの食材よりも価格が高く、なおかつ売ることに成功しているということになります。
これって不思議ではないですか?
価値がないのに、高く売れるって。
私個人は、価値の高い物が高い値段で売れるべきだ、という観念を持っているのでなかなか納得のいかない部分もあるわけです。
キャビアが高く売れる理由は?
キャビアが高く売れる理由を調べてみました。
結論をざっくり言うと、
高く売れる理由①:チョウザメの数がとても少ない(=珍しい)
高く売れる理由②:養殖だと8年もかかる(=面倒臭い)
ということでした。
キャビアの生みの親であるチョウザメは絶滅危惧種だそうです。もともとヨーロッパでキャビアを最初に食べ始めた頃からチョウザメの数は多くはなかったそうです。
もともとチョウザメはレアな存在だったってことですね。
そこへ人間による環境破壊のせいでさらに個体数が減少。これにより、チョウザメのレア度はレア→スーパーレアになるわけです。
ウルトラレアへの階段を駆け上がっていくチョウザメ
スーパーレアになると価格も上昇していきます。
そこでさらに不運なことにスーパーレアのチョウザメを狙って野蛮な人たちが乱獲や密猟をしだすわけです。そして絶滅危惧種の仲間入りをしてしまい今に至るわけです。
この不運によりチョウザメのレア度はスーパーレア→ウルトラレアへとさらにランクアップを果たすことに。
現在ではチョウザメの養殖に成功しているそうですが、キャビア(卵)を取るまでに8年もかかるんだそうです。長い!
ここで、「なぜ食材として価値がない(あまり美味しくない)のに高い値段でも売れるのか」という本題に戻ります。
それはキャビアがウルトラレアな存在で数が少ないから、というのが答えになります。
ダイヤモンドもキャビアと同じ理由で売れている?
実はダイヤモンドもキャビアと全く同じ理由で売れています。
宝石だから! 綺麗だから! と一般的には考えられていますが、ダイヤモンドが高い値段で取引されるのはまさに「数が少ないから」という理由なのです。
※ダイヤモンドは原石を採掘できる環境が非常に限られており、一度に少しの量しか採掘できません。また、硬脆性材料であり超精密加工を要求されます。
つまり、ダイヤモンドはそもそも原石の状態でも数が少ない。そして、綺麗に加工されて商品になれたダイヤモンドはさらに数が少ない。
だから値段が高いのです。
数が少ないというのは、人間の(特にお金持ちの)コレクション欲を刺激します。女性で買い物が好きな方が期間限定、地方限定というフレーズに弱いのも、結局は「数が少ないから欲しくなる」というわけなのです。
安くても売れない商品たち・・・
キャビアのように美味しさに関係なく希少性だけで高く売れるものもあれば、「価値があるのに高く売れない」というものも世の中にはたくさんあります。
その代表例はトイレットペーパー!
トイレットペーパーと聞いて、ありがたがる人なんてまずいないでしょうね。
日本で売ってる激安トイレットペーパーは海外の高級品と同じ品質
トイレットペーパーなんてものが存在するのは一部の先進国だけですよ。
そもそも発展途上国にはトイレットペーパーが存在しないという所も多いのです。インドでは近くに落ちてた野球のボールでお尻を吹いたという経験談も聞いたことがあります。
イギリスではトイレットペーパーがありますが、安い物を買ったら紙が固すぎて、お尻を拭いたら血が出たという話も。
イギリスの1番高いトイレットペーパーでさえも日本の1番安いものと品質が同じらしいです。
イギリスの高級トイレットペーパー=日本の激安トイレットペーパー
これほど優秀な(海外では高級品として売れるであろう)日本のトイレットペーパーはなぜ安く売られているのでしょうか?
トイレットペーパーが安いのは「必要なもの」だから
その答えは、トイレットペーパーが「欲しいもの」ではなく「必要なもの」だからです。電気や水道なども「必要なもの」なので安く売られているわけです。
逆に絵画や芸術品、高級車などは必要ではなく、「欲しい物」だから高く売れます。
キャビアやダイヤモンドが高い値段で売れるのも「欲しい物」だからです。
商売を始める場合は、この必要なもの(ニーズ)と欲しいもの(ウォンツ)の違いを知っておくと、いろいろとお得な場面があるかもしれませんね。
ニーズ:トイレットペーパー、電気、水道 などなど
ウォンツ:高級車、ダイヤモンド、キャビア、絵画 などなど
ニーズとウォンツのビジネスでの使い方
先ほど、話の締め方に困って「ニーズとウォンツを知ってればお得だ」と言いましたが、やっぱり撤回します。知ってるだけでは1ミリも役にも立ちません。
ニーズ(必要なもの)とウォンツ(欲しいもの)の違いを知っていることよりも、この知識をビジネスや商売でどう使うかということに意義があるんじゃないでしょうか。
そこでニーズとウォンツのビジネスでの使い方を紹介します。
①自分の売ろうとしている商品やサービスがニーズかウォンツのどちらに該当するかを探る。
↓
②ニーズ(必要なもの)に該当する場合は、競合他社の質や市場価格を調べる。
②ウォンツ(欲しい物)に該当する場合は、商品やサービスがどの程度顧客に利益を提供できるかを調べる。
↓
③ニーズの商品:調べた情報をもとに価格を決めて売る。激しい競争の世界で戦う。
③ウォンツの商品:提供できる価値にもとづいた価格で売る。
もし、あなたの売る商品が、価値の高い物だった場合(ウォンツに該当してた場合)、ニーズの商品ように市場価格に基づいて安く売ったりすると、価値が低い物と誤解されてなかなか売れないという場面に直面することがあります。
ウォンツをニーズとして売ると失敗する
つまり、ウォンツに当てはまるのに、ニーズとして売っちゃうというケースが商売をやっているとかなりの数があります。
こういう場合はあえて値段を上げるという方法が成功する場合もあります。
書籍を売り出すときに、1980円、2980円、3980円の3パターンで売ったら、なんと2980円が1番売れたというケースもあります。普通に考えたら1番安い1980円が最も売れそうな気がしますが、お客さんが買いたい値段(=自分に提供される価値)は2980円だったというわけです。
また、全然売れないカメラマンが1万円から3万円に価格を上げたら、飛ぶように売れて仕事が次から次へと入ってきたという話も。これは値段を上げることで、そのカメラマンが提供していた仕事の価値と価格がマッチしたからなんですが、このあたりの話はまた別な機会にお話しいたします。
お読みいただきありがとうございました。